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リスクマネジメントニュース
高齢者介護における経口補水療法の活用

第21回全国介護老人保健施設大会 岡山「ランチョンセミナー」

高齢者介護における経口補水療法の活用

岡山市にあるホテルグランヴィア岡山にて2010年11月12日、大塚製薬工場共催の「ランチョンセミナー」が開催され、老人保健施設の関係者ら約650人が参加。経口補水療法等の研究に広く取り組んでいる谷口英喜氏が、経口補水療法の基礎から利用法までをわかりやすく解説した。

講師:谷口 英喜 氏
福島県立医科大学医学部卒、医学博士。神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科准教授。神奈川県立がんセンター麻酔科非常勤医師

座長:財団法人共愛会 介護老人保健施設「虹」の藤本宗平理事長

高齢者は脱水になりやすく、体液管理が特に重要

座長の藤本理事長による講師紹介から、セミナーはスタートした。谷口氏は最初に、「経口補水療法(ORT:Oral Rehydration Therapy)は、経口補水液(ORS:Oral Rehydration Solution)を経口摂取し、脱水症になりそうな状態、あるいは脱水症になってしまった人を病院へ行かなくても治療できる方法」と解説。その後、セミナー開催にあたり実施された老健施設へのアンケート結果(下記参照)から、水分管理の意識は高いがお茶での管理が多いこと、市販のORS「オーエスワン(OS-1)」は知られているが、ORTの認知度は低いことなどを示し、「ORTは高齢者や家族、介護者のためにもなり、施設で最も使い勝手の良いもの」と推奨した。

次に、体液には栄養素や酸素を運ぶ、不要な老廃物を体外へ出す、熱を汗として逃がすなど、重要な役割があることに触れ、「体液はすべての栄養素の源。体液管理なくして、栄養管理は成立しない」と訴えた。また、のどの渇きを感じにくい、老廃物の排出に多くの水分が必要、日常生活動作(ADL)の低下などによる筋肉減少や経口摂取量の低下といった高齢者の特徴を指摘。「徘徊者の脱水も意外に多く、高齢者は脱水症になりやすいため、体液管理が特に重要」と強調し、脱水症を簡単に見つける方法(下記の「脱水症チェック法」参照)をアドバイスした。
体液は水と電解質からなり、からだから体液が失われた状態が脱水症である。このため、「水と電解質の両方を補給しないと、脱水症の治療にはならない」と、間違った水分管理に警鐘を鳴らした。

経口補水療法(ORT)はみんなにやさしい治療法

体液を補給するために行う補水療法には、輸液療法(点滴)とORT(ORS)がある。輸液療法は最も有効的な療法だが、医師が常駐していない介護施設では容易に行えず、病院へ搬送する必要がある。そのため、時間も費用もかかる。
輸液療法にはインシデントも発生するが、谷口氏が調査したところ、病院での術前の点滴をORSにすることでインシデント数は減少、看護師の仕事量も半減したという(上記参照)。介護施設における補水療法として、ORSが有用であることを谷口氏は示唆した。

ORTは70年も前に、開発途上国でコレラによる脱水症が発生した際、医療設備もないなか、点滴に代わる療法として始まった。今ではWHOや米国疾病管理予防センター(CDC)など多くの国で、ORT応用に関するガイドラインが策定されている。「イメージは“飲む点滴”。ORSには吸収率を高めるため、ナトリウムとブドウ糖が一定の割合で含まれている」と谷口氏。「体内に入った水分の大半は小腸にあるナトリウム・ブドウ糖共輸送機構で吸収されるが(下記図参照)、お茶や水、ジュースなどではこの機構は利用されない。脱水症時には、お茶や水を飲めば飲むほど体内の塩分が薄まって希釈性低ナトリウム血症になり、意識レベルの低下、痙攣などが起こり危険」と注意を促した。

脱水症の適切な水分補給法としては、「体重減少率に応じてORSを活用し(下記参照)、10%以上の体重減少や血圧が低下したりした場合は、躊躇なく点滴を選択」と解説。「唾液の増加による口腔環境の改善、保水効果の高いことから頻尿対策、脱水が原因の便秘の解消」への効果も期待を込め、「施設で脱水症をしっかりカバーすれば、病院へ行かずにすむことも多い。まずは介護職員、家族がORTの知識を有することが大切」と述べた。

そして最後にORTの活用ポイント(上図参照)を紹介し、「脱水症の徴候が見えたら、初期の段階からORTを行ってください。あの施設はORTをやってくれるというのは、信頼される施設になる1つの手段」と、ORTの導入を呼びかけた。セミナーを聞いた参加者の感想は、「点滴は極力、避けたいので参考になった。簡単にできる脱水チェック法を実践したい」(東京都・看護師)、「施設でORTを行っているが、胃ろうの入所者にもORSは有効。スタッフの脱水対策にも良いことがわかった」(宮城県・施設スタッフ)など。いずれもORTに高い関心を示していた。

第46回 高齢者の脱水症状

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